Top >> 木づかい図書館 >> 「木づかいシンポジウム」みんなで木を使いましょう!

木材を生み出す森林は、地球温暖化の防止をはじめ、山地災害の防止や水源のかん養をなど、私たちの安全で快適な暮らしに欠かせない多様な公益的機能をもっています。木材は利用しても再生産できる人や環境に優しい資源であり、木材の利用を促進すること(木づかい)は、森林の整備を促すとともに循環型社会を築くうえでも重要です。
木づかいを生活者目線で語るとき、その多くは「一生に一度の買い物」である住宅に止まっていることが多く、それ以外の用途ではあまり使われていないのが現状ではないでしょうか?
そんななか、最近では木のおもちゃが商品のおまけになったり、企業のノベルティ商品として木製品が採用されたりと、生活者目線での動きが徐々に見えはじめてきました。
そこで、生活者が暮らしの中でたのしく木を使っていけるような事例を紹介するとともに、これからのアイディアを皆さんと考えていけるようなシンポジウムを開催しました。
| 日 時 | 2010年8月25日(水) 14:00〜17:15 |
| 場 所 | 港区立「エコプラザ」 |
| 主 催 | NPO法人森のライフスタイル研究所、港区立エコプラザ |
| 共 催 | NPO法人活木活木(いきいき)森ネットワーク |
| 後 援 | 社団法人国土緑化推進機構、長野県産材販路開拓協議会 |
| 助 成 | 森と水の森林基金 |
国産材の間伐材をふんだんに使った、木の香りが清々しい港区のエコプラザで、 森のライフスタイル研究所による「木づかいシンボジウム」が開かれた。
まずは、主催者の「森のライフスタイル研究所」代表の竹垣英信氏から今回の開催の目的について説明と挨拶があった。
「現在、日本では国産材の使用が、全体のまだ2割ぐらいに留まっています。一般の消費者にとって、木づかいは住宅関係に偏っていて、生活の中で幅広く使われていないように思う。もっと日常使いができて、生活の中で木を感じられることはないかと常々考えてきました。そこで、今回はその先例となる3つのケーススタディを紹介していただき、その後、参加者と一緒に木づかいのアイデアをキャッチボールできればと思います」と、新しい発想で国産材の可能性を考えていくイベントであることが紹介された。
参加者も、従来の林業関係者だけではなく、デザイナーさんや広告代理店や企業の方などどちらかというと川下の方が多く、新鮮な発想で国産材の木づかいを考える良い機会となった。

グリコのキャラメルといえば、どんな年代の人も子どもの頃に親しみ、その時代のおまけの玩具を楽しみにした思い出がある、まさに日本のロングセラー商品。
この歴史ある「アソビグリコ」に2010年の3月から木製の玩具「あそべる木のおもちゃ」がついて話題になっている。種類は10種類。「ダルマおとし」などの懐かしいおもちゃから「つみきあそび」「ママゴトセット」など子どもたちに人気の木製玩具まで、小さな箱の中にわくわくするような玩具の世界が詰まっている。

グリコのおもちゃ作りは1922年から現在まで続き、その数、2万数千種類、50億個を超えているという。広報IR部 山本京子さんは、グリコのおもちゃのあゆみを画像で紹介。素材もセルロイドやブリキ、粘土といったものからプラスチックなど時代に合わせて変遷。どのシリーズもその時代の世相を反映し、その時代の子供の姿が見えてくる。
おもちゃの開発過程についても山本さんは詳しく解説。グリコでは、おもちゃと言っても製品の一部として重視しているため、市場調査からデザイン化、製品になるまで早くて1年、長ければ3年もかかるという。

「今回の木製玩具シリーズは、子供だけでなく親、そして祖父母といった3世代が一緒に遊べるということがポイントです。木のおもちゃは祖父母世代にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮。世代を超えて一緒に遊ぶことで、玩具を通じた遊びの伝承もできます。そんな玩具には木のぬくもりがぴったりだと考えたのです」
山本さんは、グリコが木のおもちゃを採用した理由をこう説明する。
グリコでは、創業者江崎利一氏の「食べることと遊ぶことは子供の二大天職」という企業理念を守り、玩具もおまけでなく、製品の重要な一部という考え方で玩具作りに大きな力を注いでいる。今までも「タイムスリップグリコ」や「ミニ絵本」など、子供だけでなく大人にも人気の玩具を開発してきた。
そのグリコが、5年ぶりに木のおもちゃを復活させたということは、時代が求める要素、子供が必要としている要素を、ある意味木という素材が表現しているのかもしれない。

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「アソビグリコ」についている「あそべる木のおもちゃ」シリーズ9点(カラーのもの)※実際は10種類 |
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フロンティアジャパンは、企業の依頼で消費者向けのノベルティを企画、製造している企業である。一般的にノベルティは、ある製品のキャンペーンなどで無償、もしくは条件付きで消費者に与えられるもので、コストやロットといったしばりも厳しく、環境配慮型のものは少なかった。
フロンティアジャパンさんも元々は中国でノベルティの生産をしていたという。しかし、ある時、代表取締役の額賀泰尾さんに山の現状を見に行く機会があり、手入れをされずに放置された山が増えていること、そして人工林では適切に間伐や除伐をするなどして「木は伐らないといけない」ということを知り、衝撃を受けたのが国産材のノベルティの始まりだ。

額賀さんは早速木製品のノベルティ需要を調べるものの、ほとんどゼロに近い状況で見つからなかった。普通だったら、ここで需要がないものと考えるところを、額賀氏は「ビジネスチャンスあり」と読んだ。
その後、国産材のノベルティをまずは世の中に知ってほしいと、ギフトショーやインセンティブショーなどの国内の展示会に出展して営業を続ける。
「ブースを作って、来場した方や企業に日本の森の現状について説明しました。でもその頃は京都議定書という言葉を知っている人はわずか。3.8%というCO2を森林で吸収する目標や、間伐材の説明などもしましたが、なかなか受注には結びつきませんでしたね」
取り組んだ当初は動きが鈍かったが、1〜2年こういった地道な努力を続けるうち、ポツポツと注文が入るようになったという。そして気候変動などの環境問題への関心の高まりに応じて、さまざまな企業からのノベルティに国産材を使うケースが増えていった。

額賀さんは、ヒノキの間伐材を使ったノベルティなどを画像により紹介。飲料、車、通信、住宅機器会社などさまざまな企業の例が紹介された。
中でも、すのこの余り材を利用したノベルティはユニーク。すのこの上板の端材からはコースター、27mm角の底板からはマグネット、プランター、アロマブロックと、すのこを作った残りからノベルティを作るという「カスケード利用」がされている。

2009年からはCSR活動の一環として企業とのコラボレーションなども始まった。たとえば、INAXでは、三重県の社有林に社員が山に入って間伐作業を行ない、その間伐材を使ってフロンティアジャパンがノベルティ制作を行なった。同様の取組はJOMOでも行なわれている。
さらに2010年からは企業向けではなく、一般消費者に直接間伐材を使った製品を販売する試みもスタート。チャネルも東急ハンズ、インテリアショップなど100店舗に広がり、消費者への間伐材訴求を強めている。


「森を創ることがひとつの商品の始まり」と考える額賀さんは、国産材を使ったノベルティビジネスが森林再生につながっていることを意識し、さらに多くの国産材を使って間伐が行なえるよう貢献していきたいと抱負を語った。
最後のケースは、国産材をそのまま使うのではなく、発想を変えて木をテキスタイルにして使うという斬新なアイデアだ。
国産材を「天然木自在シート」として開発したのはゼロワンプロダクツ株式会社 代表取締役 樋口伸一さん。龍谷大学理工学部との共同研究により、繰り返し折り曲げても割れず、縫製加工が可能な素材「縫える木」を開発した。主力商品の「テナージュ」は、天然の木をスライスしたツキ板に樹脂を充填させ、補強材として和紙や不織布、天然皮革、帆布を貼り合わせたもので、木の持つやさしさと柔軟性を持ちあわせた素材となった。

製品は、パソコンの天版、携帯電話カバーなどハードなものから、ハンドバッグ、財布、ブリーフケースなどのファッションアイテムまで幅広い。
また、もうひとつはテナージュを幅2mmにスリット(裁断)したものを縦糸に使用して西陣織の技術で織りあげた「木織テナージュ」。こちらもipodケースやバッグなどの製品化が計画されている。
もともと樋口さんは、日本発で世界に挑戦できる商品を作りたいと考えていたという。そんな時にスイスのジュネーブで見た、柿の木を使ったアタッシュケースが目にとまる。誰もみたことのない素材だが、重くて実用的ではない。そこで、大学と共同で「縫える木」を開発したという。

「木は人間に一番近い素材だと思います。触感、匂いなど五感に響く素材だし、人にとってやさしい素材。割れる、折れるという問題点を解消すれば用途が広がるだろうと思ったのが最初です」と樋口さん。
事業コンセプトの「ユビキタス・グリーン」は樋口さんの造語だという。いつでもどこでも木を身の回りにおいて使ってほしいという願いがこめられているそう。樋口さんの夢は木の織物でできたスーツを着ること。
確かに木をテキスタイルとして使う事ができれば用途が大きく広がり、いつでもどこでも木を身の回りで使えるようになるかもしれない。

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最後のコーナーでは参加者からの質問にパネラーが答えるという形でパネルディスカッションが開かれた。参加者からは、紹介された事例への具体的な質問が活発に出て、関心の高さを伺わせた。中にはすぐに製品化に結びつくような情報の交換も。具体的質問が多かったことからも、木づかいへの関心の広がり、国産材や間伐材を使った商品化やビジネス化といったことへの注目度の高まりが感じられた。
